えー、今回はちょっと趣向を変えまして、ドジャースの山本由伸氏の英語力ではなく、巷を賑わせている彼の『名言』の一つがどのように発生したのかを解説・考察してみたいと思います(´∀`)
このページを読んでいるほとんどの方がご存じだとは思いますが、山本由伸投手の「負けるという選択肢はない」という名言は、最初から本人がそのまま英語で言った言葉ではありません。
もともとは山本投手が日本語で語った、
何としても負けるわけにはいかないので
という趣旨の発言を、通訳である園田芳大氏が英語で、
Losing isn’t an option.
と訳したことで生まれた言葉です。
もともとこの通訳の園田芳大氏、調べてみたら異色の経歴を持っている方でして、近いうちに記事を書いてみたいと思いました。
話を戻しますが園田芳大さん、通訳をする際に常に謙虚な山本由伸氏の発言を『盛る』傾向があるらしく(´∀`)
Losing isn’t an option.という通訳になった模様。直訳すると「負けることは選択肢ではない」という意味になります。
つまり、この言葉は、
- 山本由伸本人の日本語
- 通訳である園田芳大氏による英語訳
- 英語を見た日本人による日本語への再翻訳
- SNSでの拡散
という流れを経て、「山本由伸の名言」として広がったと考えられます。
なお、後に山本投手本人はドジャースの優勝セレモニーで「You know what? Losing isn’t an option.」と英語で発言しています。
つまり、最初は通訳から生まれた言葉でしたが、後から本人も公式の場で口にした形です。
山本由伸の「言っていない名言」とは?
山本由伸投手の「言っていない名言」として話題になったのは、主に次の言葉。
Losing isn’t an option.
負けるという選択肢はない。
この日本語だけを見ると、かなり強い言葉に見えます。
一方で、もとの日本語は「何としても負けるわけにはいかないので」という、もう少し自然で控えめな言い方でした。
Full-Countは、この言葉がワールドシリーズ第2戦前日会見での山本投手の発言を、園田芳大通訳が「Losing isn’t an option」と訳したものだと説明しています。
つまり、山本投手が最初から「負けるという選択肢はない」と日本語で言ったわけではありません。
ただし、意味が大きく間違っているわけでもありません。
「負けるわけにはいかない」を、英語として力強く、短く、印象的に表現した結果、「Losing isn’t an option」になったと考えるとわかりやすいです。
原文の日本語と英語訳を比べる
まず、発生源になった言葉を整理します。
山本投手のもとの日本語は、報道によると次の趣旨です。
何としても負けるわけにはいかないので
それに対して、英語訳は次のようになりました。
Losing isn’t an option.
この2つを比べると、意味の中心はかなり近いです。
どちらも、
- 絶対に勝ちたい
- 負けは許されない
- チームのために結果を出したい
という気持ちを表しています。
しかし、言葉の印象はかなり違います。
「何としても負けるわけにはいかないので」は、日本語らしい控えめな表現です。自分の決意を語っていますが、断言しすぎない余白があります。
一方で、「Losing isn’t an option」は英語らしい強い表現です。
文字通り「負ける」可能性を選択肢から消しているようですよね(´∀`)
この差が、名言化の大きな原因です。
「Losing isn’t an option」の意味
「Losing isn’t an option」は、直訳すると「負けることは選択肢ではない」。
もう少し自然な日本語にすると、次のようになります。
- 負けるわけにはいかない
- 負けは許されない
- 負けるという選択肢はない
- 絶対に勝たなければならない
日本語訳なら「負けるわけにはいかない」が一番自然かな、と。
なぜなら、もとの日本語が「何としても負けるわけにはいかないので」だからです。
「正確な訳」と「バズる訳」は少し違います。
正確さを重視するなら「負けるわけにはいかない」。
名言感を重視するなら「負けるという選択肢はない」。
この違いを理解すると、今回の現象がかなりわかりやすくなります。
なぜ「言っていない名言」になったのか?
結論から言うと、翻訳をさらに日本語に戻したことで、言葉の印象が変わったからです。
流れとしては、次のようになります。
①:山本由伸が日本語で話す
「何としても負けるわけにはいかないので」と発言する。
②:通訳が英語にする
「Losing isn’t an option」と訳す。
③:英語訳が話題になる
英語圏やドジャースファンの間で、力強い言葉として広がる。
④:日本語に再翻訳される
「負けるという選択肢はない」と訳される。
⑤:SNSで名言化する
「山本由伸、かっこよすぎる」「言ってない語録」として広がる。
こんな感じでしょうか?
これが「本人はそこまで言っていないのに、名言として広まった」理由です。
原因①:日本語の「わけにはいかない」が英語で強くなった
今回の一番大きな原因は、「負けるわけにはいかない」という日本語のニュアンスです。
「わけにはいかない」は英語に訳すと強くなりやすい表現です。
日本語の「わけにはいかない」には、次のような意味が含まれるからです。
- そうすることはできない
- 立場上、許されない
- 責任がある
- どうしても避けたい
- 絶対にそうしたくない
つまり、「負けるわけにはいかない」は、単なる「負けたくない」ではありません。
「チームの状況を考えると、自分が負けるわけにはいかない」という責任感のある表現です。
これを英語で短く言うなら、
- I can’t lose.
- We can’t lose.
- I can’t afford to lose.
- Losing isn’t an option.
などが考えられます。
その中でも「Losing isn’t an option」は、かなり決め台詞に近い表現です。
だからこそ、英語としては自然でも、日本語に戻した時に「名言感」が強くなったのです。
原因②:「option」という単語が名言っぽい
「Losing isn’t an option」が名言化した理由は、「option」という単語にもあります。
結論から言うと、「option」は日本語に戻すとインパクトが出やすい単語です。
「option」は日本語で、
- 選択肢
- 選べるもの
- 可能性
- 手段
という意味です。
そのため、「Losing isn’t an option」を直訳すると、
負けることは選択肢ではない
になります。
ここから少し自然にすると、
負けるという選択肢はない
になります。
この日本語は、とても強いです。
なぜなら、「負けるかもしれない」という可能性を考えていないように聞こえるからです。
たとえば、普通なら「勝ちたいです」と言うところを、「負けるという選択肢はない」と言うと、覚悟の強さが一気に増します。
実際には、もとの日本語はもっと自然な決意表明でした。
しかし、「option」という単語を経由したことで、言葉がかなりシャープになりました。
これが名言化の原因です。
原因③:英語は短いほど強く聞こえる
英語では、短い文ほど強く聞こえることがあります。
「Losing isn’t an option」もその典型です。
文の構造はとてもシンプルです。
- Losing:負けること
- isn’t:ではない
- an option:選択肢
たったこれだけです。
しかし、短いからこそ印象に残ります。
日本語で「何としても負けるわけにはいかないので」と言うと、やや説明的です。もちろん自然な表現ですが、キャッチコピーとしては少し長いです。
一方で、「Losing isn’t an option」は短く、強く、リズムがあります。
SNSやスポーツ報道では、こうした短い言葉が拡散されやすいです。
たとえば、
- Just do it.
- Never give up.
- No excuses.
- We believe.
のような言葉も、短いから覚えやすいです。
「Losing isn’t an option」も同じです。
内容がシンプルで、勝負の場面に合っていて、しかも山本由伸の活躍と重なったため、強い名言として広がったのです。
原因④:山本由伸の活躍が言葉に説得力を与えた
この言葉が広がった最大の理由は、山本由伸投手が実際に結果を出したからです。
名言は「言葉」だけでは広がりません。
その言葉に合う行動や結果があるから、強く残ります。
山本投手は2025年のポストシーズンで大きな活躍を見せ、ワールドシリーズMVPにも選ばれました。True Blue LAは、2025年のポストシーズンで山本投手が37回1/3を投げ、防御率1.45を記録したと整理しています。
さらに、ドジャースの優勝セレモニーでは、山本投手本人が「You know what? Losing isn’t an option.」と英語で発言しました。MLB公式もこの場面を紹介しています。
つまり、最初は通訳の英訳から生まれた言葉でした。
しかし、その後の山本投手の投球内容と本人のスピーチによって、言葉と実績がつながりました。
だからこそ、単なる「意訳」ではなく、ファンの記憶に残る名言になったのです。
「負けるという選択肢はない」は誤訳なのか?
結論から言うと、誤訳ではでないでしょう。
ただし、かなりかっこよく意訳された表現、言うなれば超訳です。
「何としても負けるわけにはいかないので」を英語にする場合、直訳に近い表現なら次のようになります。
- I can’t lose no matter what.
- We can’t lose this game.
- I can’t afford to lose.
- I have to do whatever it takes not to lose.
この中で、もとの日本語に近いのは「I can’t afford to lose」です。
「負ける余裕はない」「負けるわけにはいかない」という感じです。
一方で、「Losing isn’t an option」は、ややドラマチック。
日本語に戻すと「負けるという選択肢はない」になるため、本人の言葉よりも強く聞こえます。
つまり、今回の訳は、
- 意味としては合っている
- ただし表現はかなり強い
- 直訳ではなく意訳
- 結果的に名言化した
という整理が自然です。
誤訳というより、「名訳」または「強めの意訳」と考えるとよいでしょう。
もし直訳寄りにするならどうなる?
山本投手の日本語を直訳寄りにするなら、次のような英語になります。
I can’t afford to lose.
これは「負ける余裕はない」「負けるわけにはいかない」という意味です。
もとの日本語のニュアンスにかなり近いです。
ただし、名言としての強さは「Losing isn’t an option」の方があります。
比較すると、次のようになります。
- I can’t afford to lose.
→ 自分の立場や状況的に、負けるわけにはいかない - Losing isn’t an option.
→ 負けること自体が選択肢にない
前者は自然です。
後者は強いです。
スポーツ報道やチームの合言葉として使いやすいのは、明らかに後者です。
そのため、通訳が瞬時に「Losing isn’t an option」と訳したことは、英語圏のファンに響きやすい判断だったと言えます。
なぜSNSでここまで広がったのか?
ぶっちゃけると、「言っていないのに言っていそう」という面白さがあったからではないかと(-_-;)
SNSでは、正確な直訳よりも、印象に残る言葉が広がりやすいです。
今回の言葉には、拡散されやすい要素がそろっていました。
- 山本由伸の活躍と一致している
- 英語が短くてかっこいい
- 日本語に戻すとさらに名言っぽい
- 本人の雰囲気とのギャップがある
- 「言ってない語録」としてネタにしやすい
特に大きいのは、山本投手の落ち着いた雰囲気とのギャップです。
本人は淡々と「負けるわけにはいかない」と語っただけなのに、英語訳を通すと映画の主人公のようなセリフになります。
このギャップが面白く、SNSで広がりました。
そして後に本人がセレモニーで実際に「Losing isn’t an option」と言ったことで、「言っていない名言」が「本当に言った名言」になりました。日刊スポーツも、SNSでは「言ってない語録が1つ正式に」といった反応が出たと報じています。
英語学習として見ると何が学べる?
今回の話は、英語学習にもかなり役立ちます。
結論から言うと、翻訳では「正確さ」と「伝わりやすさ」は必ずしも同じではありません。
たとえば、「何としても負けるわけにはいかないので」を英語にする場合、直訳だけを考えると不自然になりやすいです。
日本語の「わけにはいかない」は、英語にそのまま置き換えにくいからです。
そのため、英語では状況に合わせて表現を選ぶ必要があります。
具体的には、次のように使い分けるとわかりやすいです。
- 自然に言いたい
→ I can’t afford to lose. - 強く言いたい
→ Losing isn’t an option. - チームとして言いたい
→ We can’t lose this game. - 気持ちをシンプルに言いたい
→ I have to win.
このように、同じ日本語でも、英語では複数の言い方があります。
今回の「Losing isn’t an option」は、正確さだけでなく、場面の熱量まで伝える訳だったと言えます。
まとめ:山本由伸の名言は、意訳が生んだ最高のフレーズ
最後にまとめます。
山本由伸投手の「負けるという選択肢はない」は、最初から本人がその日本語で言った言葉ではありません。
もとの日本語は、
何としても負けるわけにはいかないので
という自然な表現でした。
それを通訳が、
Losing isn’t an option.
と英語にしたことで、強い名言として広がりました。
つまり、この言葉は「誤訳」ではなく、「意訳によって生まれた名言」です。
そして、その後に山本投手本人が優勝セレモニーで「Losing isn’t an option」と英語で発言したことで、もともとは通訳発の言葉だったフレーズが、本人公認の名言のような形になりました。
今回のポイントは、次の通りです。
- もとの日本語は「何としても負けるわけにはいかないので」
- 英語訳は「Losing isn’t an option」
- 直訳は「負けることは選択肢ではない」
- 自然な訳は「負けるわけにはいかない」
- 名言風に訳すと「負けるという選択肢はない」
- 最初は通訳の意訳だった
- 後に山本本人も英語で発言した
- 活躍と重なったことで、強い名言として残った
翻訳は、単語を置き換えるだけではありません。
その場の空気、選手の覚悟、ファンに届く響きまで含めて言葉を選ぶものです。
「Losing isn’t an option」は、その意味で、山本由伸の2025年ポストシーズンを象徴する最高の意訳だったと言えるでしょう。


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